川崎病ってどんな病気?
川崎病とは、川崎富作博士が発見した病気です。4歳以下の乳幼児を中心に、国内だけでも年間15,000人が発症します。
全身の血管の炎症を伴う原因不明の病気ですが、適切な治療によって多くの症例において症状が抑えられ、元の生活に戻ることができます。ただ一方で、心臓に後遺症が残ってしまうこともあります。
男女別では、やや男児に多い傾向があります。現在のところ人から人へとうつる病気ではないと考えられていますが、兄弟姉妹で同時期に発症することがあります。
川崎病の症状
多くは、急な発熱から始まります。これに加え、以下のような特徴的な症状が見られます。
- 38℃以上の高熱
- 両目の充血
- 唇・舌が赤く腫れる(唇に亀裂ができて痛む、舌がイチゴのようになることも)
- 手足にさまざまな形・大きさの赤い発疹が現れる
- 首のリンパ節の腫れ、痛み
- 手のひら、足裏の赤み
- 手足の指先の赤い腫れ
BCG接種後の発赤
川崎病の診断を検討する際、BCG接種部位の発赤は重要な指標の一つです。
接種部位に通常より強い発赤や腫れが見られる場合、川崎病に特徴的な免疫反応の可能性があります。また、発熱、口唇の赤みや腫れ、発疹、頸部リンパ節の腫脹などの症状が併せて認められる場合は、川崎病が疑われるため、早急な対応が必要です。
川崎病の経過
典型的な症例では、以下のような経過を辿ります。
急性期
発症から10日までが急性期となります。
発熱を初めとする先述の症状が現れます。
この時期にいかに全身の炎症を抑えるかが治療において重要となります。
回復期
発症10日~1カ月くらいが回復期となります。
発熱が治まり、他の症状についても軽快していきます。
遠隔期
発症の1カ月以降は遠隔期となります。
急性期の合併症の程度によって、この時期の経過が左右されます。
川崎病になる原因
川崎病のはっきりとした原因は、未だ解明されていません。
しかし、感染症などがきっかけとなって免疫の働きが過剰になり、炎症を引き起こすのではないかとの指摘があります。
また、ほとんどが4歳以下の乳幼児期に発症する、男の子の方がやや多い、冬場に発症しやすいという傾向が認められます。遺伝性はなく、人から人へうつることもないと言われています。
川崎病の合併症
川崎病は、全身の血管の炎症を伴う病気です。
これにより、冠動脈瘤を合併することがあります。冠動脈瘤とは、心臓に血液を送り込む「冠動脈」がこぶのように膨らむ病気であり、大きくなるほど狭心症・心筋梗塞のリスクが高まります。冠動脈が完全に詰まる心筋梗塞に至ると、命を落としたり、後遺症が残ることがあります。
ただ、近年は急性期の治療が改良されたことで、後遺症が残る可能性は低くなっています。早期発見・早期治療が重要となる病気の1つです。
川崎病の治療方法
川崎病と診断された場合、原則入院が必要です。速やかに提携する病院をご紹介します。
その上で、免疫グロブリンの点滴、アスピリンの内服、ステロイド療法、抗TNF-α薬の静脈内注射などが行われます。
これら薬物療法で十分な効果が得られない場合には、好中球エラスターゼ阻害剤やシクロスポリンを用いた治療、血漿交換なども必要になります。
入院期間は早ければ1週間程度、長い場合は4週間程度となります。
退院後について
アスピリンの内服は3カ月必要ですが、早ければ1週間程度、長くても4週間程度で退院です。
多くの場合、以前と同じように元気に生活ができます。ただ、慎重な経過観察は必要です。発症の1カ月後には心臓超音波検査を行い、後遺症の有無を判断します。後遺症がないと判断された場合も、定期的な検査を受けながら約5年の経過観察が行われます。
原則は入院した病院で検査を行いますが、当クリニックでも心臓超音波検査でのフォローが可能ですので、一度ご相談ください。
一方、後遺症がなければ、特に運動の制限はございません。
再発がみられる場合
再発の症状としては、初回と同様に発熱、発疹、口唇の赤みや腫れ、四肢末端の変化、リンパ節の腫脹などが挙げられます。また、BCG接種部位の再発赤も再発の兆候として現れることがあります。再発が疑われる場合には、初回と同様に迅速な治療が必要です。冠動脈瘤などの合併症リスクを考慮し、早期診断と治療が重要ですので、気になる症状があればお早めに当クリニックまでご相談ください。
冠動脈瘤に後遺症が残ってしまった場合
心臓の後遺症が残る割合は2~3%、うち冠動脈瘤については0.1%程度となっています。
大きな冠動脈瘤が残ってしまった場合には、長期にわたるアスピリンの内服、運動の制限が必要になることがあります。何らかの理由によって適切な管理ができず、病状が悪化してしまうというケースも残念ながら存在します。
後遺症が残った場合には、ご両親と医療機関、そして学校などと連携した対応・管理が重要となります。